現在、飲食業界における求人倍率は「調理職要員」が約5倍、「接客サービス要員」は何と約9倍と非常に深刻な状況にあります。
一方で、2019年ラグビーW杯や2020年東京オリンピックに向けてインバウンド飲食需要はさらなる拡大が予想され、ますます「人手不足」が大きな経営課題となっております。そうした状況下、「人手不足」解消策として「外国人労働者」の受け入れ拡大のための「入国管理法改正」が進行しております。飲食業界においては、その解消手段として「外国人雇用」は大いに歓迎、期待されるところです。しかしながら、単に「人手不足」解消というだけで、“誰でも良いからどうぞ”的な風潮は如何な気がします。

そもそも「飲食ビジネス」の本質的使命とは何でしょうか。「美味しいものを食べたい、旨いお酒が飲みたい」「飲食を通してコミュニケーションを図る、ストレスを発散する」、これは人間の本質的な、最大級の欲求であります。
飲食業界で働く人は、お客様にそうした機会・場面を演出・提供しているわけです。すなわち、調理担当者は“美味しい料理をつくる”、接客担当者は“楽しい空間をつくる”ことが重要な役割となります。

従って、そこで働く人達は、「飲食ビジネス」の仕事の本質を自覚し、社会貢献度も非常に高いビジネスであることをもっと自覚し、自負すべきかと思います。なにより、日本の飲食業界には、職人肌をもった調理人や、飲食店舗を通して色々な人との係わりを大切にし、喜び・生き甲斐を感じている人達がたくさんおり、世界を見渡しても最高レベルの水準にあります。

「飲食ビジネス」の経営者にとって、「人手不足」問題は喫緊の大きな経営課題ではありますが、新たに働く人達に対してこうした理念を伝えていくことが非常に大切かと思います。
特に「外国人雇用」では、言葉・文化の違いによるコミュニケーション問題などクリアしなければならない課題はありますが、ビジネスとしてのやり甲斐や喜びを実感してもらい、共鳴して働き、他国でもリーダーとして活躍できる人材に育成していくことも、日本の飲食業界にとっても大きな使命と言えるのではないでしょうか。

日向雅之