今回は孫子の兵法をご紹介します。「孫子」は有名なので、既にご存知の方も多いかと思います。孫子は紀元前5世紀から6世紀に「孫武」という人によって書かれたものだと言われています。当時中国は諸国乱立しており、戦争が絶えなかった時代でした。そのような状況下で、孫子は戦争に勝つための方策、いわゆる兵法書として著作されました。
内容は人間心理の基本的な有りようを基に、組織が勝つための仕組みを合理的に説明するといったもので、単なる戦術を披瀝するものではありません。その著述内容の深さゆえに、二千数百年以上を経た現在では、戦略の理論書としてよりも、経営の指南書として重用されています。
私も小さな会社を経営していますが、孫子の兵法を自らの判断と行動の拠り所としています。8年間なんとか会社を潰さずにできているのも、孫子の兵法を多少なりとも参考にしている結果かと考えております。以下に、私にとって特に有用だった孫子の兵法(の一部)をご紹介いたします。

その1 勝兵はまず勝ちて、しかる後に戦いを求め、敗兵はまず戦いてしかる後に勝を求む。
おおよそ勝者は「勝つべくして勝つ体制」を整えてから事に臨むものです。負ける人はイチかバチかで、勝負に臨み運に任せて戦うものです。ビジネスも事前の準備をどれだけするか、で結果が異なってきます。当然と言えば、当然のことですが、(私を含め)つい、怠る人は多いです。特に起業する場合は、事前にどこの、誰に、何を、どのように販売して、どれだけの利益を出す、といったことを具体的に策定しておく必要があります。

その2 彼を知り己を知らば百戦危うからず彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦うごとに必ず危うし
この文言は有名です。ご存知の方も多いかと思います。私は、この文言を、自社、他社、顧客、周囲の環境をよく認識した上で、経営に臨むことが肝要である、というように考えています。会社経営・ビジネスにおいてはSWOT分析(強み(Strength)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の分析)が相当すると思います。その中でも、自社の強みとそれを投入する機会(顧客等)をしっかり、把握することが重要です。このことをしっかり認識していないと、ビジネスが「一か八かの博打」になってしまう危険があります。
※SWOT分析はWEB等ですぐに調べることができます。

その3 兵は拙速を尊ぶ
個人的には、中小企業経営にとって最も重要な事項の一つとして「スピード」を考えています。顧客への応対、製品開発、商品(製品・サービス)の提供等々のスピードを上げることで、成果(利益)獲得も早くなり経営も楽になります。中小企業が大企業に勝てる要素も、このスピードです。小さくても小回りを利かせ、顧客の要望に対し素早く対応することで大企業に太刀打ちできます。私も意思決定を速くして、ものごとを行う場合は、短時間で集中してやることを心がけています。

その4 名君賢将の動き手人に勝ち、成功すること衆に出ずる所以のものは、先に知ればなり
情報収集の重要性を説く言葉です。原文の意味は「明君とか賢将とか言われる者が相手に勝ち、目覚しい成功を遂げるのは人より先に敵情を知り、事態を予知しているからである。」とのことです。原文は難しい表現ですが、意味は理解できます。ビジネスにおいても、やはり早くからの情報収集が重要だということです。言われて見ると当然のことです。現代のような、技術革新が速い世の中では特に重用です。私はこのことを肝に銘じ、他社製品の動向などを常にチェックするようにしています。

その5 兵は詭道なり
原文では、「兵法は駆け引き」のことです。孫子は戦争に勝つことを目的としていますが、ビジネスにおいても、状況に応じて臨機応変に策を繰り出すことは重要です。ライバルの力量と周囲の状況を見極め、自分の力を最大限発揮できるように策を発することで、いわゆる奇策ということになります。私は、単に「色々やってみる」という風に解釈しています。(販促資料を作ったり、DMを出したりするなど・・)


上は私が参考にした「孫子の兵法」についての書籍です。20年ほど前に購入しました。原版は1962年に出版されています。(私が生まれる前・・)
現在では「孫子の兵法」を基にした様々なビジネス書も出版されています。現代風にアレンジされているので、そちらを読んでみるのも面白いかもしれません。

以下は、その他、人事・組織面において、孫子に記されている内容です。(上記「孫子の兵法 村山孚(まこと)著」より抜粋)

①明確な方針、正しい原則を明らかにすること。(ビジョン、スローガンなど)
②信頼して権限を委ねた以上、細かい口出しはしない。
③組織を明確化し、伝達方法を整えること。
④個々人の能力よりも全体の勢い、はずみをつけること。その勢いをつけるためには、中心となる人を選んで勢いを推進する核にする。
⑤言葉では無く具体的な事実・行動で示す。
⑥何事も気分を明るくさせることが肝要。
⑦消極面より積極面を示すこと。こうすれば成功するということを示すべきで、こうすれば失敗するというようなことはあまり告げない。
⑧将たるもの(経営者)は感情によってことばを発してはならない。
⑨賞するときは思い切って賞すること。時には意表をついて規定にない賞を出し、強烈な印象を与える。

どうでしょうか、現代でも充分に通用する内容だと思います。これが二千数百年前に記されていたというのですから驚きです。今回ご紹介した「孫子」が皆様のお役に少しでも立てば幸いです。

矢島浩二