私は、中小企業診断士として活動していた6年と9ヶ月前の2010年1月に道路の補修材を製造販売する会社を創業しました。創業するに至った経緯は、割愛しますが、基本的には独自技術を基にした創業でした。経営コンサルタントである中小企業診断士が、自分の会社を潰すわけにはいきませんので私も必死です。まだまだ悪戦苦闘中です。ただ、7年目に突入して何とか生き残っている、という点ではぎりぎり合格といったところでしょうか。そこで今回のこのコラムでは、悪戦苦闘中の私が参考にした理論と補助金の活用についてご紹介いたします。少しでも皆様のご参考になれば幸いであります。
一番目は、「強みの上に事業を築け」です。これは、有名な経営学者である「ドラッカー」という人が提唱していることです。企業でも、個人でも「強み」を作ることが基本ということです。言ってみれば、「伝家の宝刀」といったところでしょうか?私の会社の場合は、開発した製品そのものを強みとしています。製造業の場合は、やはり製品そのものが多いでしょう。この強みは経営の立脚点として、創業には無くてはならないものです。製品、サービス、店舗、顧客対応など様々あります。ただ、自らの強みを強みとして認識しておられない経営者の方もいます。もったいないことです。しっかり意識して、作り出すようにしましょう。
伝家の宝刀(イメージ)
二番目は「ブルーオーシャン」を選ぶことです。これはブルーオーシャン戦略として提唱されています。ブルーオーシャンとはレッドオーシャンと対になる言葉で、競争のない未開拓市場のことです。競争の激しい既存市場がレッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)」になります。
当然のことながら、ブルーオーシャンの方が生き残れる確率は高まります。その領域は、製品・サービスの種類であったり、地域や顧客の種類であったり色々あります。経営の理論として有名ではありますが、当たり前と言えば当たり前の話です。しかし、しっかり意識して自社の領域を見つける必要はあると思います。ブルーオーシャンという名称を知らなくても、起業が成功した方の多くは、実践していると思います。
三番目は、弱者の戦略(ランチェスター戦略)です。ランチェスター戦略は、元来軍事の戦略理論です。現代では、これは経営理論として展開され、多くの会社で効果を上げてします。ランチェスター戦略には二つの法則があります。第一の法則は、一騎打ちの法則とも呼ばれ,白兵戦や騎馬戦のように1対1の戦闘の場合、損害は双方の兵力数と武器の性能に依存するというものです。第二の法則は、集中効果の法則と呼ばれ、総力戦や機械兵器戦のような場合、損害は双方の兵力数の2乗比で大きくなるというものです。以下の図は私なりに二つの法則をまとめたものです。
第一の戦略(弱者の戦略)
第二の戦略(強者の戦略)
経営資源が少ない創業直後の中小企業が第二法則に基づく総力戦を展開しても、ライバルである先行企業には勝てません。かりに、ライバル企業が自社の3倍の規模なら、ライバル企業の成果は9倍になります。従って、弱者である創業企業は第一法則に基づく戦略を展開する必要があります。先行企業が手を出せない領域、分野、方法を展開することです。製造に手間がかかる分野への進出、特殊なサービスの提供、地域密着型の応対、個別の顧客対応、など様々なやり方があります。さらに自社の強みをその領域に集中させることでより大きな成果を獲得できます。成功している中小企業の多くがこの方法で市場に臨んでいます。ランチェスター戦略は、ネットでも多くの記事が公開されています。興味のある方は調べてみて下さい。
最後は、特に役に立った補助金について述べます。補助金は、国や地方自治体のものがあります。私は会社の所在地である京都府の補助金と国の補助金である「小規模事業者持続化補助金」に採択され活用することができました。いずれの補助金も書類審査があり、基本的には「自社の独自の強み、他社にない特長」を説明する必要があります。他の有名な補助金には、「ものづくり補助金」や「創業補助金」といった国の補助金がありますが、いずれも書類審査が必要で、「他社にない独自性」が特に求められます。
今回の補助金では、研究開発や商品開発、販路開拓などで使用した費用の2/3ほどが補助されました。先に費用を支出して、領収書等の支出の証拠書類と申請書類を関係機関に提出した後に補助金が交付されます。手続きは多少面倒なこともありますが、支出した資金の2/3が戻ってくるといいうのは創業したての企業には、非常にありがたいことでした。各種補助金は、J-NET21のホームページ(j-net21.smrj.go.jp)でご覧になることができます。私も機会あるごとにチャレンジしたいと考えています。
以上述べたことをまとめます。①強みを作る、②競争相手がいない領域を選ぶ、③他社(大手企業等)が手を出せない市場・領域で勝負する、④補助金を活用する、です。①、②、③は重複する部分もありますが、やはり軸は①の「自社の強み」であると感じます。私も今以上に「強み」を意識して経営に取り組んでいきたく考えております。それでは、頑張っていきましょう。
矢島浩二