私が主として関係している「飲食ビジネス」の最新動向についてのレポートです。現在、色々な意味で大きな構造転換期を迎えております。箇条書きにまとめるならば、以下の点がキーワードとも言える注目ポイントです。
1.市場環境
日本の総人口が減少し、少子・高齢化が進む中、高度経済成長時代に急発展した様な「外食市場」の拡大は期待できず、むしろ縮小傾向が予想される。また、最近ではコンビニや食品スーパー等での弁当・総菜など、いわゆる「中食市場」が急成長しており、この市場との争奪戦も激化している。
2.飲食需要
今や“1億総グルメ時代”であり、“宅急便”や“ネット社会”の発展により、誰もが全国どこからでも“新鮮で美味しい食材や料理”が手に入り、ブロガーによる“食レポ”など最新の飲食店情報も溢れている。それゆえ消費者のニーズ変化が非常に速く、新しい料理もすぐに飽きられ、同じメニューで継続することも難しくなっている。
3.店舗環境
そうした中で、供給側である「飲食店」の数は減っておらず、街中いたる所に「飲食店」は存在し、新しい店ができては消える、生き残りを掛けたオーバーストア状態にある。一方で、飲食ニーズに対する付加価値競争も相当レベルに高まっており、激しい競争環境となっている。
4.労働環境
「飲食ビジネス」は典型的な“労働集約型”ビジネスであり、お客様ニーズを最優先し、長時間営業及び長時間労働を前提に成長してきたサービス業でもある。また、これほどパート・アルバイト従業員の貴重な戦力の基に運営されているビジネスもない。ところが、政府主導の「働き方改革」の推進や労働観の変革により、人手不足や人件費高騰などの問題が大きくクローズアップしており、根本的に“人で成り立っているビジネスモデル”の革新が不可避の状況となっている。
5.経営環境
また、最近の大きな経営問題となっているのが、コンプライアンス(法律遵守)やリスクマネジメントへの対応である。例えば、深夜営業、長時間労働、パワハラ・セクハラ、未成年飲酒、飲酒運転防止、受動喫煙、衛生管理、食中毒、食材偽装、食品廃棄物など、小さな飲食店でもこうした問題が発端で廃業に追い込まれるケースが増えている。
この様に「飲食ビジネス」を取り巻く環境としては大変厳しいものがありますが、一方で、「食べること」は人間生きる上で不可欠であるとともに、最大限の欲求としての“美味しい料理が食べたい”、“旨いお酒が飲みたい”は「人類永遠のニーズ」でもあります。毎日あちこちのテレビ番組で”グルメ情報“や”繁盛店“が紹介されているのを見ればお分かりでしょう。だから、こうした厳しい時代の中でも、新しい“繁盛店”が誕生しているのは「飲食ビジネス」ならではと言えます。つまり、時代にマッチした“飲食ニーズ”や“運営スタイル”を捉えられれば、他ビジネスと比べて容易に、短期間で急拡大できる特性があります。(もちろん失敗例も数多くありますが・・)
ただし、「飲食ビジネス」で成功されている方には必然の共通項があります。それは、①誰よりも飲食が好き、②人(お客様や従業員)と接し、楽しませることが生き甲斐、③強いリーダーシップと精神力を持つ、という点です。 こうした点を踏まえた上で、事業分野は決まってないが、起業・創業を目指されている方は、一つの候補ビジネスとして検討されては如何でしょうか?
日向 雅之