昨今の新聞で人手不足による倒産件数が、昨年同月比で増加しているという記事が多くみられます。ある調査会社のデータによれば特にサービス業が多いようです。
人手不足倒産とは、採用難などの人材不足を要因とする倒産などと言われております。
わたくしは、中小企業の事業再生コンサルタントとして活動しておりますが、多くの関与先でも人材不足は深刻な課題となっております。
では人材不足が倒産の要因になるとはどのようなことでしょうか?わたくしの経験上からお話をさせていただくと、製造業でいえば人材不足による納期遅延、不良品の増加等、サービス業でいえば、サービス品質の低下、提供時間の遅延による顧客離れによる収益の低下、また、リテンション対策(従業員退職防止策)による固定費(給与等)の増加を原因とした、収益悪化、労働環境の悪化による労務問題の発生等によるものです。特に生産性に寄与する中堅どころの従業員の離職は深刻でしょう。
人出不足倒産とは、人材不足が直接の要因ではなく、顧客に提供するサービス品質や製品力が低下し、顧客離れが起こり、結果として収益が悪化、倒産するのではないでしょうか。
では、なぜ、離職者が多数発生したり、採用してもすぐやめてしまうのでしょうか?
業務内容が3Kであったり、給与、待遇(休日、時間)、処遇、評価への不満等が一般的に考えられることでしょう。もちろんそのような原因も多数ありますが、わたくしの経験上、上記要因は、辞職の理由付けであるのではないかと思います。上記の要因をもつ多くの企業でも定着率の良い会社は多くあります。
関与先の従業員とよく話す機会があるのですが、よく聞くのは、「頑張って企業が成長したら会社はどのようになるのか?」「自分はどのような立場になれるのか?」「自分は成長できるのか?」「経済的に豊かになるのか?」という未来に対する不安が離職する要因、それと経営者に対する信頼感の低下ではないかとおもいます。
会社の業績が厳しい時や急激な成長時には全社員頑張りますが、モチベーションが続くのにも限界があり、そう長くは続きません。
休日、給与を増やしても一時的には離職率は低下するものの、半年もするとなれてしまいそれが当たり前になります、昨今騒がれているブラック企業等もってのほかです。会社はもうかっても、従業員の未来にはつながりません。
大企業であれば、新たな人材採用にも余裕があるかもしれませんが多くの中小企業は経営資源が限られております。
離職者が少ない会社には経営者に特徴があると思います。離職者を減少させるために経営者が気に掛けることは三つ。一つめは経営者自身が経営理念を持ち、会社の未来を創造し経営計画を立てること。二つめは、従業員にあるべき未来を伝え賛同を得て、協力してもらうこと。三つめは、従業員に会社は将来○○のようになる、将来○○のような人材になってほしいい、立場は○○でなどと具体的に伝えることです。もちろん従業員の声に耳を傾けることもすべきです。可否は別として、できるだけ詳しく伝え、未来を見せ、話し合う場を設けることが必要だと思います。
ぜひ従業員に未来を見せ、会社(経営者)、従業員がお互い信頼しあい成長できる良い関係を構築していただければと思います。
荒尾 大介