私は経営コンサルタントとしての長年の経験から、「倫理的経営」を持論としています。そして、どうすれば、これが経営信条やリスク管理として大事なことであると、経営者やセミナーに参加する皆さんにご理解いただけるのか、苦心を続けてきました。

アメリカGE社のかつての社訓(Make money but ethically「利益を出そう、でも倫理的に」)などを使ってできるだけ具体的な話をしてきましたが、どうも聞き手は具体像が描けないようでした。最近、やっと「エシカルマネージメント」という言葉が世の中に浸透しつつありますが、何とも抽象的な用語です。どうすればいいのか具体的なものが見えません。

どうしたものかと考えている時、自分の良心、すなわち「お天道様」に従えと説く金子博人さんの「お天道様を忘れた人たち」という本に出合いました。この本の趣意はお天道様を忘れた自民党の憲法改正草案に対する異議申し立てというものではあるのですが、読後、これだと膝を打ちました。古今東西の歴史に通じた著者の堂々とした論陣です。

何か事にあたって判断に迷ったら、自分の中にある良心、お天道様に質してみる。胸に手を当て自問してみる。この判断、行動はお天道様に恥じる申し訳のできない悪事なのか、それとも正々堂々お天道様に何ら恥じるものでないのか、その判断で決断する。これは分かりやすく、正しい規範です。実際に胸に手を当て説明すると、聞き手は頷いてくれます。否、私自身も納得します。

検査データの改ざん、クレームへの不適切な対応、役人による公文書の改ざん、こうしたことが世に知れ渡り、最悪は会社の運命を左右する事例が跡を絶ちません。

自分の胸の内にあるお天道様に従えば間違いないと信じ、胸に手を当て、自信をもって、恥じない行動を起こし、安心して会社経営にあたる、これが自己信条の発露であって、また、リスク管理の基本だと思っています。悩み多き経営者の皆様、是非習慣となるまでに実行してみてください。

若林民雄