銀行の支店長時代、大学講師時代、各種業種への勤務経験を通じて、多くの経営者を見てきましたが、素晴らしい経営者に共通していることは、経営に全知全能を傾けながらも「心の豊かさ」を感じさせるものを持っておられるということです。それを感じさせて貰う場面は、経営者が夢を語られたり、趣味の話をされるときです。このうち、私の趣味にも通じる話を少ししてみたいと思います。

私は、現在、「俳句」「川柳」「短歌」「作詞」「ネーミング」「日本舞踊」「小唄」「津軽三味線」と貪欲に嗜んでいます。
「日本舞踊」「小唄」「津軽三味線」以外は、全て自己流です。全国大会などで、時々、最優秀賞を頂き、新聞や雑誌などで紹介されますと、必ずや各方面から「結社で一緒にやりませんか」等の誘いを受けます。どの結社にも立派な指導者がおられ、そのお方の感性で指導をされます。
「みんな違ってみんないい」という言葉もありますが、私はまさにこの考え方で、「自己流」を楽しんでおり、指導者の感性に染まることには、違和感があります。

「芸は身を助ける」と言うと大袈裟ですが、私は、これまで随分と趣味に助けられたことがあります。趣味の話がきっかけで大きなお取引を頂いたり、上場企業の社長から芸能界の大御所、著名人との付き合いまで幅広くご縁を頂いてきました。勿論、沢山の趣味を続けるのですから時間を如何に上手に使い分けるかをいつも心掛けています。今では、気分転換の範疇から趣味が人生そのものになりつつある状態です。

「自己流」で始めたそもそものきっかけは、「日本語の美しさ、四季折々を言い表す形容語彙の多彩さ、発音、響きの心地良さ」などの魅力に取り付かれたことから始まります。それに何といっても推敲の楽しさです。作品をその時の気分で手直しすることもありますが、自分だけの世界に入り込める瞬間がとても嬉しいです。

経営者と話すときには、意識して仕事以外に趣味をお聞きするようにしています。挑戦されてきた趣味の分野、きっかけ、レベルなどからそのお方の人生哲学や心の豊かさまで見えてくるようで、親しみや温かみさえ感じられることも多いです。冒頭で、素晴らしい経営者には「心の豊かさ」があると言い切ったのは、仕事以外に時間を割く努力をされたり(=効率化、生産性向上、迅速な意思決定)、趣味仲間と交流されたり(=他業種交流、多面的な視点)の努力を通じて、心の豊かさを養っておられるからです。経営者然にとどまらず、きっと人生謳歌も意識されているからでしょう。    

北村純一