皆様の会社で「広報・プロモーション」について考えたことはありますか?広報と言うと「大企業がやるもので中小企業には関係ない」「うちにアピールする材料なんてないよ」「広報・プロモーションは正直苦手だ」と思われる経営者の方も多いのではないでしょうか。

先日、中小企業の方々がプレスリリースの場で自社の製品やサービスをアピールする場に出席しました。自社の強みを記者の方に分かりやすくプレゼンする方もいれば、人前で話すのは苦手で「えー」「あのー」と言葉のフィラーを繰り返してしまい、言葉に詰まってしまう方など様々でした。今回は、中小企業の広報・プロモーションをどうやって行っていくか、触れたいと思います。

アピールが苦手な経営者の方とお話しをしていて感じることは、自社の製品やサービスのどの部分が他社と比べて強みなのか、何となく理解はしていても、整理できていない方が多いのではないか、と感じることがあります。競合他社と比較して、どの点が優れていて、どの点が劣っているのか分からないために、自信をもってお話しすることが出来ない、ということです。

また、顧客の声に耳を傾けることを行っていない方が多いのではないか、と感じるときもあります。これは想像も含まれますが、顧客の声に耳を傾け、お褒めの言葉もクレームも、まるごと受け止め、すべてを理解した上で開発や新サービスを創ることが出来れば、前よりも自信を少し持てるようになって話が出来るのではないかと思うのです。

ひと昔のように、企業側の発想やアイデアだけで売れることは難しい時代となりました。そうではなく、お客様の声に耳を傾け、要望を取り入れながら、少しずつ改善した製品やサービスが多くの方に受け入れられる時代になっています。よって、まずは自社の製品やサービスのどこが強みなのか、また、その製品やサービスは、お客様の要望を取り入れながら出来上がったものなのか、この2点をまず考えてみることをお勧めします。この2点を整理して、自社の強みが何なのか具体的に分かったとき、以前よりも「もっと広めたい、社会に貢献したい」という気持ちが芽生え、いつの間にか走高跳のバーを越える瞬間がくるかもしれません。人前で話すことが苦手で、何を話していいか分からず頭が真っ白になってしまう自分が、いつの間にか、各社の記者たちを広報・プロモーションの支援者として見つめ、堂々と前を向いて説明しているかもしれません。以前は記者からの質問で何が飛んでくるかわからずおどおどしていたにもかかわらず、今はむしろ「どんな質問でもどんとこい!」と言わんばかりに前向きな考えに変わったりすることを経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか。具体的に自社の強みが分かってくると、今度はどうやってアピールすれば良いか考えるのが楽しくなります。四半世紀前はテレビ、新聞、ラジオ、雑誌といった4媒体が主流でしたが、現代は自社でメディアを持つことも、発信することも可能な時代。SNSを使ったことがある人は分かると思いますが、初めてフェイスブックやツイッターを使って投稿したときは、ちょっと新鮮でわくわくしなかったでしょうか。「いいね!」をたくさんもらうことに喜びを感じたりしませんでしたか(おつきあいの「いいね!」もありますが)?

その共感を、今度は動画で容易に感じることが出来る時代になります。2020年には「5G」という新しい通信規格で、今の通信速度の20倍の速さで高画質画像もあっという間にダウンロードが可能になります。また、ライブ配信も高画質でネット中継できるようになります。さらに、AI技術が動画制作をサポートする時代がすでに始まっています。テキストや静止画などの素材をクラウド上にアップすれば、自動的にAIが絵コンテを作成してくれて、プレスリリース、SNS、ECサイト向けの動画を制作してくれるのです。以前のように、編集ソフトをインストールして、マウスやスマホで編集する必要もなくなってきており、動画広告市場は2025年までに現在の倍以上の約5,000億円市場まで伸びる試算も出ています。

動画の広報・プロモーションでは、これまでの地上波のCMのように、15秒、30秒の世界ではなく、尺も自由に決められ(あまり長すぎると視聴する人は限られてしまいますが)、コストも抑えることが出来、ターゲットを絞ってアピールすることが可能です。まだ、動画で広報・プロモーションを仕掛けている中小企業は少ないので、もっと広報・プロモーションで「売上を伸ばしたい」「知名度を上げたい」「社会に貢献したい」と思われる方は、ぜひチャレンジしてみるといいと思います。

動画はテキストや静止画に比べると、人間の脳も処理が忙しくなります。2020年のデータ通信料は現在の約10倍になると予測する調査もあり、それだけデータ量も膨大で、中小企業の広報・プロモーションに対する影響も大きくなります。中小企業にとってはプラスの材料でもありますが、影響が大きい分、コンテンツの内容については、よく考えて発信する必要があります。

中小企業の広報・プロモーションが変わる時代が目の前に来ています。

NPO法人厚木診断士の会 中小企業診断士 匂坂俊夫